葬儀に参列したあとには、会葬礼状とともに、小さな紙の袋に入った塩が同封されていることがあります。この塩は「清め塩」と呼ばれ、体の穢れを払って清めるために使います。
誰かの葬儀というのは思いがけずやってくることもあるので、慌てないためにも細かいマナーを知っておくことが大切です。今回は清め塩の由来と適切な使い方について紹介します。
清めの塩には、穢れを家に持ち込まないように体を清めるという意味合いがあります。もともと神道では死を穢れと考えたため、塩を使って穢れを祓い、体を清める習慣ができたのです。清めの塩は故人の霊を祓うためのものではありません。人の死には邪気が寄り付くとされ、この邪気を祓うために清めの塩が使われるようになったのです。つまり、清めの塩には故人を冒涜するような意味合いはないということになります。
清めの塩は、家に帰ってきてすぐ玄関をまたぐ前に行います。人に見られたくない、マンションの共用部を汚したくないといったことから、玄関の内側で清めの塩をする方もいますが、この場合は穢れが家の中に入ってしまいます。そのため、玄関をまたぐ前に行うようにしましょう。
胸、背中、足元の順番で3箇所に振りかけます。ひとつかみくらいの少量をかけ、その後手で払うようにしましょう。ご自身で振りかけても構いませんが、家族がいる場合には家族に振りかけてもらうようにしましょう。近年では足元のみに塩をかけるというやり方をする方も増えています。
仏教では死を穢れと考えないため、清め塩が使われない葬儀もあります。特に浄土真宗は、死を穢れた不浄なものとする考え方に否定的です。その一方、清めの塩は日本の習俗であるという考えからその使用を容認している宗派もあります。日本では神仏習合の影響によって神道と仏教の教えが混ざり合っているため、仏式の葬儀であっても清めの塩が用意されることがあるのです。清め塩に対する考え方は宗派によって大きく変わります。清めの塩を使うかどうかは個々の判断に従いましょう。葬儀後に塩を渡されたからといって使わなければならないということはありません。