焼香は、お香を焚いて拝む行為を指します。お香のよい香りを捧げることで自らを清らかにし、仏様や亡くなられた方に敬意と感謝の心を捧げるという意味もあります。その香りが仏様の徳や教え、また極楽浄土を思い起こさせる作用もあるそうです。そのため、焼香は邪気を祓ってくれるものとして、葬儀だけでなく、法事などさまざまな仏教行事に用いられています。焼香は心身を清めてお参りをするための大切な作法の一つと言えます。
宗派やご焼香の種類によって多少の違いはあれど、ご焼香の基本的な作法は共通しています。以下では最も一般的な立礼焼香を例にとって見てみます。焼香台の前まで進んだら一度遺族に向かって一礼します。遺族への一礼の後、焼香台の1、2歩手前まで進んで故人の遺影に向かって深く一礼しましょう。更に焼香台の前まで歩み寄り、香炉のそばに置いてある抹香を右手の親指・人差し指・中指の3本でつまみます。抹香をつまんだまま軽く頭をさげながら、右手を額の高さで掲げます。これは「お香を押しいただく」と呼ばれる作法で多くの宗派で行われる所作ですが、浄土真宗のご焼香では行われない点に注意しましょう。押しいただいた抹香は静かに香炉へ落とし、数珠を持っていれば両手にかけて合掌します。抹香をつまんでから香炉に落とすまでの所作は宗派によって繰り返し行われる事もあります。ご焼香が終わったら同じ向きのまま焼香台から1歩下がり、遺族に一礼して自分の席に戻りましょう。
ご焼香に対する考え方は同じ仏教でも宗派ごとに若干異なるので、それぞれにご焼香の回数にも開きがあります。しかし、これを全て把握して葬儀ごとに使い分けるという事は求められません。仏式の葬儀では基本的に自分の家が所属する宗派の作法でご焼香すれば良いとされています。以下に代表的な宗派のご焼香回数を掲載するので、自分の宗派における回数を参照してみてください。
焼香の回数に特に定めはなく、1回か3回焼香をします。
焼香は3回が基本です。これには諸説あり、大日如来、弘法大師、ご先祖様のそれぞれに焼香をするため、または仏教の三宝である仏、法、僧に焼香するため焼香が3回と決められています。
焼香の回数に特に定めはなく、1回か3回焼香をします。
1度目は額にいただき(主香)、2度目は額にもっていかずに(従香)焼香をします。
焼香は額にいただかずに1回が多いですが、3回焼香をする場合もあります。また、2回(額にいただいて1回、ひとつまみして香炉にくべる)場合もあり、1回目を主香(しゅこう)、2回目を添え香(そえこう)と呼びます。
焼香は3回行うのが日蓮宗の導師の正式な作法とされています。一般参列者の場合は概ね1~3回です。
お香を額に押しいただかずそのまま1回だけ香炉にくべます。
お香を額に押しいただかず2回、香炉にくべます
以上が宗派ごとの作法の違いですが、僧侶によっても考えが異なる場合があります。また、焼香の作法は必ずしも弔問した家に合わせなければいけないわけではありません。 自分の宗派の作法で心を込めて焼香を行えば問題はありません。なお、ご自身の宗派が分からない場合は、周りに合わせて行うとよいでしょう。参列者の数が多いなどの理由で「焼香は1回でお願いします」と案内されるような場合は従うようにしましょう。